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俳優・渡部篤郎さん&l’Association Toulouse-Midi Pyrénées Japon交流会開催!

2007年2月1日(木)~10日(土)、劇場TNT(Théâtre National de Toulouse)にて、俳優・渡部篤郎さん出演の舞台、“Pluie d’été à Hiroshima”の公演が行われました。最終日の2月10日には、渡部さんとl’Association Toulouse-Midi Pyrénées Japonの会員による交流会を開催。フランス人のメンバーたちは、日頃の勉強の成果を発揮し、渡部さんに全て日本語で質問!それに対し、渡部さんも、この舞台にかけてきた想いを丁寧に語ってくれ、貴重なお話をたっぷり聞くことができました。

(小見出し) 僕のことを誰も知らない外国で、日本語以外の言葉で演じる。 これが、僕にとって一番の“修行”になった。

 Fany 今日は、渡部さんにお会いできて、とてもうれしく思います。まず、 “Pluie d’été à Hiroshima”の演出家、エリック・ヴェニエ(Eric VIGNER)さんと、出会ったきっかけを教えてください。
 渡部 日本の仕事の成り立ちというのは、プロダクション、製作会社から出演の依頼があるのが普通。でも、エリックの場合はちがった。ある日、突然、彼から連絡があったんです。実は、エリックは韓国の国立の舞台の演出をしていて、その時、この“Pluie d’été à Hiroshima”の発想があって、日本にも来ていたそうです。そこで、この舞台のイメージに合う役者を探してほしいと、彼の通訳さんに依頼したところ、その通訳さんの観点から何人かの日本の俳優が選ばれ、その中に僕も入っていたんです。僕は以前、テレビのCMの仕事で2回フランスに来ていて、フランスに興味があったので、ご飯だけでも食べてみようか、と思って会ってみました。

 Béatrice どうして、このお芝居を演じようと思いましたか?
 渡部 日本での僕の活動というのは、流れがある程度決まっていて、ちょっと刺激がなかった。だから、どういう状況、内容がどうこうというよりも、何かいい刺激になるんじゃないかと思って。悪い意味じゃなく、軽い気持ちでやってみようと思いました。

 Lydie 今回の舞台は全てフランス語の台詞。どうやって台詞を習いましたか。フランス語で話すのは、難しいですか?
 渡部 難しいですねー(笑)。パリで3月~5月の中旬まで、2ヶ月弱稽古があって、そこで初めてフランス語を習いました。その直前まで京都で時代劇『巷説百物語』の撮影をしていたので、きちんと勉強する時間がなくて。だから、真剣に習い始めたのは、パリに行ってから。モニックさんという海外のアーティストに、きちんとしたフランス語を教える専門家がいて、午前中はその方とフランス語の練習をして、夜から舞台の稽古をしました。

 Laurent フランス語の稽古をしながら同時に台詞を覚えたんですか?
 渡部 1959年に日本語で訳されている本があって、その本を読んで日本語で理解していたので、それとフランス語を照らし合わせて覚えました。

 Cédric フランス語で演じることは、どんな経験になりましたか?
 渡部 それが、今回の一番の僕のテーマ。何か刺激を求めて、簡単な気持ちでフランスに来て、2ヶ月稽古もあるし何とかなるだろうと思ってたんだけど、映像と違って舞台だから、人のコンディションも違うし、もちろんお客さんも違う。場所も変わる。だから、フランス語でやるということよりも、異国で、別の言葉で、僕のことを誰も知らない人の前でやるということが、本当に僕にとって一番の“修行”になりました。

 Lydie 録音された自分の声で演じる場面がありましたが。
 渡部 冒頭のシーンの録音された部分は、初め全部ナマの声でやっていたんです。しかし、なぜあれを録音にしたかというと、いくつか理由があって、まずひとつは、生の声でやることで4時間くらいの舞台になってしまった。そでこ、エリックは客が飽きてしまうんではないか、と。それともうひとつは、彼が目指していたのは、“映画的な舞台”。だから、大きな声でしゃべると舞台みたいになってしまうので、僕らはマイクをつけて、普通の会話と同じトーンでしゃべっていました。録音を入れることによって、時間が短くなったというのもあるけれど、本来エリックが目指していた映画のような舞台に近づいたと思います。僕的には短くなってよかったけどね(笑)。

 Eric 舞台が観客席の中央にあったので、普段よりも演じることが難しかったのでは?
 渡部 僕は日本で舞台をやっていないので、嫌だなとか、いいなとか思わず、流れにまかせていました。それよりも、フランス語でやらなくちゃいけない、というのがまずあったから、状況がどうか、ということは気にしませんでした。

 Eric このお芝居で、相手役の「彼女」は大きな身振りや叫び声をあげる場面がありましたが、渡部さんの「彼」は、そういう表現が少なかったと思います。「彼」の感情を表現するのに、どんな点が難しかったですか?
 渡部 僕が不慣れなフランス語をしゃべること以外は、こういう身体の内面で表現するお芝居は、長年ずっとやってきていること。僕にとっては、内面でお芝居をして、少ないアクションで感情を表に出すというのは、特に大変なことではありませんでした。

 Yayoi フランス語をあれだけのテンポで話しながら、表情豊かに演技するのは大変だと思いますが、どのように集中力を保っているのですか?
 渡部 日中は、普段よりもすごくリラックスしています。朝もゆっくりだし、お昼過ぎに起きて、プールに入ったりして。あまり街も出歩かないし。やはり人前に立つこと、特に今回は、まるっきり全員が僕のことを知らないから、日本と違ってものすごくパワーを使うし、集中力も必要になる。よく、「フランス、いいね」って言われるんですが、全然旅行も観光もしていない。外国だからルールも違うし、食事も違う。仕事で来てるから観光気分ではいられない。とにかく舞台以外の時間はリラックスして、舞台に上がる手前から準備して、集中力を高めていきます。そして、終わった後は、またゆっくりしています。

 Fany フランスの観客について、どう思いますか?
 渡部 どこの街でもそうなんですが、デュラスファンというのは、すごく暖かく迎えてくれる。7月にアビニョンの演劇祭で公演しましたが、アビニョンなんかは、演劇好きな人が集まっているので、劇場からもいいパワーが出ていますね。これまでフランス6都市、ロリアンとアビニョン、カン、ナンテール、ブレスト、トゥールーズで公演しましたが、若い人は少し退屈してしまうみたい。

 渡部 ひとつ質問があるんですが、学生たちが舞台を観に来ますが、あれは義務付けられているんですか?
 TNT そうです。TNTは、Toulouse近郊の学校と提携し、小学校から高校までの生徒を受け入れています。劇場にとってとても大切なことは、若者にオープンな劇場であること。この活動は10年前から始まっていて、学校と協力し、学生たちと劇場とのつながりを強めていくようにしています。ただ、フランスでは、よく映画館や劇場が午前中、または午後だけ学校を招待して、学生だけのために芝居をみせるということをしていますが、そういったプログラムはTNTではやっていません。学校の先生から生徒に作品の解説をあらかじめしてもらい、希望する生徒を集め、普通のお客さんと混じって観賞するというかたちをとっています。私たちはできるだけいい環境で学生を受け入れたいと思っていますが、100%満足してもらうのは難しい。“Pluie d’été à Hiroshima”も、こちらから提案し、学校でこの作品の内容や背景を説明してもらっていますが、やはり若い人にとっては難しい部分もあるようです。とは言え、TNTとしては、ただこういう芝居があるから来てください、というだけではなく、きちんとその作品の内容を理解したうえで、興味のある人だけ劇場に来てもらうようにしています。

(小見出し) “包容力”のある男性。 これが、日本人の男が目指す理想像。

 Cédric このお芝居の役を演じてみて、どのような気持ちを感じましたか?
 渡部 「この男の人の魅力は何ですか?」って、よく聞かれるんですが、日本人として言えることは、“大きな心”、“包容力”ですね。舞台を観ていただいた人は分かると思いますが、僕の演じる「彼」は、何かたくさん言いたい。でも、多くを語らず、女性を心で受け止めてあげる。これは、日本人の男が目指す理想像だと思うんです。僕もまだそんなに大きな心もないし、包容力もない。でも、マルグリット・デュラスは、きっと素敵な日本の男性とめぐり合えたんだろうな、と思うんです。「日本の男性は大きな心を持ちなさい」。これはデュラスから逆に教わったこと。実は、以前、あるフランス人のインタビュアーにこの話をしたら、意味が分からない、と言われました。

 Morgane マルグリット・デュラスの作品を知っていましたか?
 渡部 映画でいくつか。例えば、『ラマン』。あとは、何か観てると思うけど・・。僕は、映画を観るときは、半分は俳優だけど、半分はお客さんだから、本業でありながら、監督が誰かとか、原作が誰かというのはあまり見ないんですよね。映画をただ楽しんでいる感じ。でも、『ラマン』は有名だから知っています。1959年に公開された、日本のタイトルで『24時間の情事』っていう映画があったけど、それもマルグリット・デュラスの作品だったとは、知りませんでした。

 Béatrice 他のフランスの作家の本を読んだことがありますか?
 渡部 ないと思います。あ、サン=テグジュペリの「星の王子さま」は読みました。

 Cédric 渡部さんの一番好きな日本の作家はどなたですか?
 渡部 いないですね。本を読むということは、食事と同じくらいのことだから、僕にとって読書は体の一部のようなもの。これが食べたいからこれしか食べないというんじゃなくて、興味があれば何でも味わってみる。だから、この作家だから読もう、というのはありません。基本的には気が向いたら読むし、読まないときは1年くらい読まないことも。

 Fany 私は、村上春樹の「ねじまき鳥クロニクル」を読みましたが、渡部さんは、マルグリット・デュラスの文体と現代日本文学の文体は、似ていると思いますか?
 渡部 似てるとは思わないですね。デュラスの文体、文学は非常に難しい。日本語で訳された作品を読んだけど、理解できないところも。それくらい難しい。

 Cédric 渡部さんは、フランス映画は好きですか?
 渡部 はい、好きです。すごくたくさん観ました。

 渡部 ところで、フランス人の皆さんは、日本に来たことがありますか?日本は好きですか?
 Lydie 京都と高山に行きました。とてもよかったです。
 Eric 東京も楽しかったです。
 渡部 東京は新しいものがすごく早いでしょ。僕は、22年新宿にいましたが、5年ぶりに新宿に行ったら建物も変わってるし、道の大きさも変わってるから迷子になっちゃいました。でも逆に、パリは7年前に行ったことがあるんだけど、いまだに同じところを歩けるからね。古い文化を守ってるな、って思います。 

 Chika 渡部さんは、Toulouseは好きですか?
 渡部 どこに行ってもそうだけど、仕事の時はそういうモードになってないよね。観光しようとか、そういう気持ちじゃない。でも、休みで行くところはどこでもいいですね。この前もビアリッツに行ったけど、すごくよかった。

 Mihoko 今後も海外の作品に挑戦したいと思いますか?
 渡部 やってみたいですね。でも、海外に来てやるっていうのは、いろいろ大変なんですよ(笑)。それにフランスに来てもうすぐ1年。1年間日本で活動してないからね。日本のプロデューサーの間で、僕はずっとフランスにいて、もう日本に帰ってこないんじゃないかっていう噂が流れてるらしくって(笑)。だから、帰国後は日本での活動を再開しよう、と。多分、映画の仕事が夏くらいから始まると思います。

 Morgane 今日はお忙しい中、私たちとの時間をつくっていただき、本当にありがとうございます。渡部さんの今後のご活躍を、心から応援しています。

(写真キャプション) 渡部さんもリラックスした様子で、和気藹々とした交流会になりました。

(写真キャプション) とても自然体で、気さくな人柄の渡部さん。フランス人のメンバーも渡部さんのファンに!